この記事では、葬儀や遺品整理が終わり、故人の遺骨をどうしようか悩んでいる方に向け、遺骨を手元に置いておく「手元供養」についての内容をまとめました。
将来的にお墓を持つつもりのない方が増えていくなか、大切な家族の遺骨をしばらく手元に置いておく方法の人気が高まっています。
いくつかのパートでご紹介していますので、手元供養にご興味がある方はぜひ最後までご覧ください。
この記事でわかること
・手元供養とは何か?種類や違い
・手元供養をする際の分骨方法
・手元供養のトラブル
遺骨の処分について知りたい方はこちらの記事を>遺骨 処分
1.遺骨をどうすると良い?手元供養は何があるの?種類と違いを解説

手元供養とは、その名の通りご遺骨を手元に置いて供養する方法を言います。
手元供養と言っても、安置方法や手元供養品の種類によってバリエーションが大変豊富なので、どれが自分たちに適しているかを十分吟味する必要があります。
今回の記事では、手元供養の種類や、それぞれの種類による方法の違いなどを詳しく解説いたします。
安置方法の種類は?

手元供養における安置方法には、全てのご遺骨を手元に置く全骨安置と、一部のご遺骨のみを残す分骨安置があります。
手元供養をする方の中では、分骨安置を選択する人の割合が大きくなっています。
どちらの方法でも、ご遺骨をパウダー状にしてから保管することが主流です。
分骨することで故人が成仏できないのではないかと考える方が時折いらっしゃるようですが、全く問題ありません。
お釈迦様のお骨は世界中に分骨されていますし、地域(特に関西地方)によって古くから分骨が行われているところも見られます。
また分骨安置には、宗派の本山と自宅(もしくは墓地)のそれぞれにご遺骨を分けることも含まれるのです。
手元供養品の種類は?

手元供養品の種類はとても多く、写真や思い出の品とともに自宅で保管できるものが増えています。
例えば、部屋のインテリアと調和するようなデザインのミニ骨壺やオブジェ、ぬいぐるみの中にミニ骨壺が収まるもの。
ミニ骨壺を収めるスペースを設けた写真立て、中にご遺骨を入れていつでも身に着けることができるアクセサリー(ペンダント・指輪・ブレスレット・ブローチなど)。
ミニ骨壺と仏具・おりんがセットになったミニ仏壇など、希望に合わせて選ぶことができます。
手元供養のメリット・デメリットは?どんな手続きが必要?

手元供養の種類が分かったところで、メリット・デメリットや手続きについてご説明いたします。
手元供養のメリット
手元供養最大のメリットは、いつでも故人の存在を近くに感じられることです。
お墓に納骨すると、お墓まで出向く必要がありますが、自宅にご遺骨があればいつでも手を合わせることができます。
また墓石を建てるよりも、費用を大きく抑えることができることもメリットです。
自宅の庭に墓石を建てることは違法ですが、室内での手元供養ならば問題ありません。
手元供養のデメリット
手元供養は、家族だけで決断することはできません。
親戚などに分骨に抵抗がある方がいる場合は、了解を得てから行わないとトラブルに発展する可能性があります。
また墓石を別途建てる場合は、手元供養と双方の費用がかかります。
アクセサリータイプの商品は、外出時に紛失してしまうことも考えられますので、慎重に扱わなければいけません。
そして数十年後に、手元供養をする方がいなくなった場合に備えて、供養を依頼する寺院や合祀墓などを探しておくと安心です。
手元供養に必要な手続き
手元供養を行う場合に、特に必要な手続きはありません。
ただし将来お墓に納骨する可能性がある場合は、分骨証明書が必要となるため、事前に取得しておいた方が安心です。
この証明書がないと、お墓に納骨することができないからです。
証明書は、火葬場での分骨ならば火葬場で受け取ることができます。
手元供養は何があるの?種類と違いを解説のまとめ
手元供養は、故人を常に近くに感じられ、少しでも悲しみを癒してくれる供養方法です。
家族や親族と良く話し合ったうえで、それぞれの家庭事情に合った手元供養品を選ぶと良いでしょう。
2.遺骨をどうする?ずっとそばで保管したい。様々な手元供養を紹介

お墓の後継者不足が叫ばれる現代では、あえて遺骨をお墓に入れず、自宅に保管して弔う「手元供養」を選択する人も増えています。
一時的に保管しておくだけの場合も含め、遺骨を仏壇に置いておくことが多いのですが、飾り方にはいろいろこだわってみたいものです。
ここでは、手元供養のさまざまな方法について解説します。
手元供養にはミニ骨壷・ミニ仏壇がおすすめ
最も一般的な手元供養の方法は、骨壷を仏壇などに安置しておくことです。
しかし、火葬場でもらえる骨壷はシンプルなデザインのものが多く、いかにも「とりあえず置いている」という印象を与えてしまうことがあります。
そもそも、手元供養だからといって遺骨をすべて保管しておくとは限りません。たとえお墓の後継者がいなくても、遺骨の大部分は納骨堂や樹木葬で埋葬し、一部のみを自宅で保管する場合も多いのです。
そのため、手元供養での骨壷は、コンパクトな「ミニ骨壷」が好まれます。
ただ小さいだけではなくデザイン性にも富んでおり、素材も陶器・金属・木材・ガラスと多彩です。
お部屋のインテリアとしても十分通用するレベルなので、仏壇以外の場所に安置しても問題ありません。故人の喜びそうなデザインのものを選んであげましょう。
また、ミニ骨壷とセットでよく使われるのが「ミニ仏壇」です。
その名の通り小型の仏壇で、スペースに余裕がないご家庭でも置くことができます。大きく分けると、家具調のものと祭壇型のものがあるので、部屋の雰囲気に合わせて選びましょう。
宗教的な意匠のないものも多く、宗教・宗派や部屋の和洋を問わずに使えるのも魅力です。
遺骨を封入したアクセサリーも作れる
手元供養の中でも近年人気を博しているのが、遺骨を封入したペンダントやリング、ブレスレット、ブローチなどのアクセサリーを作る方法です。
骨壷を安置する場合と異なり、いつでも故人と一緒にいられるのが魅力といえます。
遺骨を身につけることに不安を感じる方もいるかもしれませんが、外見上は一般的なアクセサリーにしか見えないため、周囲の人に気づかれることはありません。
製造方法はごくシンプルで、アクセサリーの中に小さな空間を設け、その中に遺骨を封入します。
微量の遺骨しか必要としないため、お墓への納骨や骨壷での保管と併用することも可能です。
なお、遺骨を取り出し可能なタイプと完全に封印するタイプがあります。
特にリングなどの小型のアクセサリーは後者になりやすいので、どちらにするかよく考えましょう。
遺骨をダイヤモンドやオブジェにすることも可能

アクセサリーへの封入からさらに一歩進んだものとしては、遺骨そのものを思い出のアイテムに加工する方法があります。
有名なのが遺骨ダイヤモンドで、遺骨に含まれる炭素を高温・高圧で加工し、人工ダイヤモンドに変えることができるのです。また、遺骨に他の成分を加え、オブジェやメモリアルプレートを作ることもできます。
その性質上、アクセサリーへの封入などに比べると費用がかかり、小さなダイヤモンドへの加工でも30万円~40万円ほどと安くはありません。加えて、作成するオブジェの大きさによっては、多くの遺骨を使用しなければならないこともあります。
とはいえ、遺骨自体が美しい姿に生まれ変わるのですから、いつまでも残しておきたい時は十分試す価値があるでしょう。
遺骨をずっとそばで保管したい。様々な手元供養を紹介のまとめ
手元供養はお墓を作らなくてもいいことと、故人を常に身近に感じられることがメリットだといえます。
従来型のお墓を利用する場合でも、遺骨の一部だけを手元供養に回すことができるため、柔軟な対応が可能です。
お墓の後継者がいない場合はもちろん、故人を失った悲しみを断ち切れない時などにも、手元供養を検討してみてください。
3.手元供養するとき自分で分骨していいの?

手元供養をする際には、ご遺骨の全てを使うケースは少なく、一部のみを使うことが主流です。
故人が旅立って時間が経ってから手元供養をすることに決めた場合、骨壺からご遺骨を自分で取り出してもよいのだろうかと、不安に思うかもしれません。
そんな不安を解消すべく、この記事で詳しく解説いたします。
分骨は本当に問題ないの?
「ご遺骨を分骨すると成仏できない」と考えている方はとても多いのですが、そのようなことは全くありません。
また、ご遺骨の扱いについて書かれている「墓地、埋葬等に関する法律施行規則」の第5条にも、分骨に関する規定が書かれています。
よって、分骨は法律で認められている行為なのです。
ご遺骨を必ずお墓に納めないといけない決まりもありませんので、いったん骨壺に納めたご遺骨を取り出し、家族で分骨するケースも多く見受けられます。
自らご遺骨を骨壺から取り出す際には、手で移す・箸を使うどちらも問題ありません。
ご遺骨は高温で火葬されていますので、衛生面を見ても何ら問題はないのです。
分骨をするのはどのような場面がある?
では、実際に分骨をするのは、どのような場面が考えられるのでしょうか。
火葬場で分骨する
この方法は、手続きも少なく短時間で行うことができます。
予め骨壺を複数用意し、分骨したい旨を斎場の担当者へ伝えておけば大丈夫です。
この際、分骨をする骨壺の数だけ分骨証明書を受け取っておくと、年数が経って手元供養を終えることになったときに手続きがしやすくなります。
骨壺に納めた後で分骨する
火葬後かつ納骨前の段階だが後日の話し合いで分骨が決まった場合や、既に墓地へ埋葬されている骨壺から取り出して分骨する場合などがあります。
前者の場合は、ご自身で骨壺からご遺骨を取り出せば大丈夫です。
後者の場合は、墓地の管理者へ連絡した上で分骨証明書の発行をしてもらうこと、取り出す前に墓地の閉眼供養をすること、墓地の構造によっては石材店への依頼が必要になることなどを覚えておかないといけません。
閉眼供養分骨の行為自体には資格や条件はありませんので、誰でも行うことができます。
分骨後、自分でご遺骨を粉砕できる?
結論から申し上げますと、自分で遺骨を粉砕することは可能です。
火葬直後であれば、強く押さえるとすぐ粉々になりますし、すり鉢・すりこぎ、乳鉢・乳棒、かなづちなどがあれば、時間が経っているご遺骨でも粉砕できるでしょう。
しかし手元供養品に納めるご遺骨は、納骨部分に入る大きさまで細かくするか、2mm程度のパウダー状になるまで粉砕するのが一般的です。
ご自身でこの細かさまで手作業するのは時間と労力がかかります。
作業環境や衛生上の心配もありますし、何より精神的な負担が大きくなってしまいます。
粉骨する機械をレンタルする方法もありますが、機械の取り扱いが不安な方もいらっしゃるでしょう。
手元供養品に納める目的であれば、専門の業者に依頼した方が安心です。
手元供養品を、指輪などのアクセサリーにする際は、商品の注文後、ご遺骨を粉砕する前に業者に郵送し、適切なサイズになるよう業者側で粉砕の作業をします。
手元供養するとき自分で分骨していいの?のまとめ
手元供養のための分骨は、いつでも身近で供養したいと願う家族にとって尊い行為と言えます。
ただし分骨に対して家族間で意見が分かれることも多いですので、必ず事前に話し合うようにしましょう。
4.手元供養で起きやすいトラブルとは?

手元供養は2005年にNPO法人が立ち上がって始まった供養法のため、墓石による供養と比べて歴史はごく浅いものです。
認知度も上がってきてはいるものの、まだまだ100%には達していません。
またお墓に対する個々の考え方の違いにより、手元供養においてさまざまなトラブルが起こることがあります。
この記事では、トラブルの事例を取り上げ、できるだけ回避するにはどのように対処すべきかを考えたいと思います。
手元供養に対して反対の声が出る可能性がある
トラブルが起こる可能性が最も高いのが、親族からの反対の声が出ることです。
先祖代々のお墓を持っている方は、同じお墓に入るのが当然と考えておられることが多く、お墓に入らずご遺骨を自宅で供養するとは考えもしないかも知れません。
たとえ故人が生前に手元供養を希望していても、納得してもらえないこともあるでしょう。
しかし、お墓が遠方にある場合、頻繁にお墓参りに行くことはできません。
また管理上の問題も出てくることでしょう。
これらの点を考えると、いつでも自宅で故人の前で手を合わせられる手元供養は、現代に合った供養法と言えるのです。
決してお参りしないわけではなく、お参りをする場所がお墓から自宅に変わるということをきちんと説明すれば、きっと理解してくれることでしょう。
事後報告ではなく、必ず事前に説明することが大切です。
分骨・粉骨に対して抵抗感を持つ人も多い
分骨は、宗教的にも法律的にも全く問題がない行為ですが、これに関しても抵抗がある方も多くいらっしゃいます。
「分骨すると故人が成仏できない」
という考えもあるくらいです。
しかし、ご遺骨の一部を各宗派の総本山に納め、残りのご遺骨をお墓に納めることも、分骨の行為にあたります。
このことをふまえると、総本山に納められたご遺骨全てが成仏できないという結論になってしまうため、問題ないということがお分かりいただけるかと思います。
粉骨に関しては、手元供養品に納める際に必要なことがありますが、ミニ骨壺を使うと多少大きめのご遺骨でも納めることができ、心の負担が減らせるのではないでしょうか。
手元供養を終えた後、海洋散骨や樹木葬などを希望するならば、パウダー状に粉骨しなくてはいけません。
粉骨に抵抗がある方には、これらの供養法は難しいこともあります。
手元供養品の紛失の可能性や、手元供養を終える際の後継ぎ問題
手元供養品に、持ち歩き出来るアクセサリーやお守りなどを選択した場合、万が一外出先で紛失してしまうと、戻ってこないことも想定しておかなくてはいけません。
手元供養品は唯一無二のものなので、同じものを作ることは二度とできません。
また、数十年後に手元供養を終えることになった際、それまで管理していたご遺骨をどのように納めるのかという問題が発生します。
お墓に納めるのであれば分骨証明書が必要ですし、棺に入れる場合は手元供養品が木製で加工されていなくてはいけません。
手元供養を引き継いでもらえる子供や親戚がいれば安心ですが、このときにも手元供養に対する考え方の違いでトラブルが起こることもあります。
手元供養に関して、家族間で意見を共有しておきたいものです。
手元供養で起きやすいトラブルとは?のまとめ
手元供養とお墓での供養どちらを選んでも、一番祈るべきことは故人の冥福です。
トラブルが起こってしまっては、故人もあの世で困ってしまうのではないでしょうか。トラブルを防ぐ最適な方法は話し合いです。
故人が安心できるように、きちんと話し合うようにしましょう。
5.手元供養に使用しなかった残りの遺骨の処分方法とは?

手元供養では、全てのご遺骨を使うことは少なく、一部のみ使用して残りは適切に供養することがほとんどです。
手元供養をした後の残りのご遺骨は、どのように供養するのがふさわしいのでしょうか。
供養方法を詳しく解説いたします。
ご遺骨の供養でやってはいけないこととは
手元供養で使うご遺骨の量は、おそらくご遺骨全体の半分以下になるでしょう。
残りのご遺骨を自宅の庭に埋めることは、法律で禁止されているので絶対に行ってはいけません。
禁止している法律は、「墓地・埋葬に関する法律」(通称墓埋法)と言います。
この法律の第4条で、「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行ってはならない」と定められています。
つまり、墓地(霊園や納骨堂も含む)以外の場所には、ご遺骨を埋葬してはいけないという意味になります。
墓地は、墓地として都道府県知事の許可を受けた区域でないといけませんので、自宅の庭は墓地とは認められません。
もちろん、自宅以外の空き地などに埋葬するのも厳禁です。
手元供養は、埋葬ではなく保管なので、この法律には該当しないのです。
ご遺骨の埋葬法にはこのような選択肢がある
それでは、ご遺骨の埋葬法には、どのようなケースが考えられるのでしょうか。
具体的に考えてみたいと思います。
墓地への埋葬
現在では最も一般的と言える埋葬法でしょう。
ご遺骨の大部分を墓地へ埋葬し、少量のみを自宅で手元供養する方法です。
お墓はあるものの、故人とできるだけ近くにいたいと思う方に利用されています。
墓地へ埋葬する際には、分骨した時に発行してもらった分骨証明書が必要です。
永代供養墓への納骨
永代供養墓は、宗旨・宗派を問わない場合も多く、無宗教の方でも利用できる場合が増えています。
永代供養墓には、納骨堂や合祀墓などがあり、納骨堂にも個別型や合祀型などさまざまな種類があります。
個別型でも、一定期間が過ぎたあとに合祀される場合もあるので、契約時に確認しなくてはいけません。
自然葬での納骨
自然葬には、樹木葬や散骨などが含まれます。
樹木葬は、シンボルツリーを標木とし、その根元に粉砕したご遺骨を埋葬する方法で、永代供養となっていることがほとんどです。
この方法にも、個別型・集合型・合祀型などがあります。
散骨も、ご遺骨を2mm以下に粉砕してから海や山林に還す方法です。
散骨は、手元供養と併用する方が多く、「ご遺骨の全てを散骨してしまうと、近くで手を合わせる場所がなくなってしまう」といった寂しさを回避することができます。
ただ、どこでもできるのではなく、市町村の条例で禁止されている場合も多く見られるため、散骨できる場所を事前に確認しないといけません。
海洋散骨を行う場合は、ある程度の沖合まで出ていくことが多いので、専門の業者に依頼して行うのが一般的です。
業者に散骨を全て依頼する、他の家族と乗り合いの船で沖合まで行き自分たちで散骨する、貸切の船に乗って沖合で自分たちで散骨するなど、希望と予算に応じて選択可能です。
本山への納骨
各宗派の大本山で、合祀納骨供養を受けることができます。
日本で古くから行われているため、永代供養や自然葬よりも、親族の理解を得られる可能性が高い供養法です。
手元供養に使用しなかった残りの遺骨の処分方法とは?のまとめ
手元供養で供養品に納めなかったご遺骨は、供養品に納めたご遺骨同様、故人の一部です。
故人が生きた証であるご遺骨を大切に扱い、最後まできちんと供養するようにしましょう。